「子供にはアプリや動画で英語を聞かせているけど、実際どんなことが起きているの?」
そんな疑問を持つパパ・ママのために、今日は「英語スイッチ現象」と呼ばれる、赤ちゃんの脳の仕組みと、日本にいながら家庭でできるこ英語脳の土台作りについてご紹介します。
英語を話しかけた時の脳の反応

プリスクールや0歳児クラスの現場では、1〜2歳のお子さんに急に英語で話しかけると、決まって見られる反応があります。
一瞬、体の動きがピタッと止まり、目を丸くしてこちらをじっと見つめ、英語の音を一生懸命聞き取ろうとする表情になります。そして数秒後、にこっと笑ってごまかすように場を切り替える——とてもよくある反応です。もちろん英語ですぐにお返事ができるお子さんもいます。
この「固まって、聞こうとして、笑ってごまかす」という一連の動きは、子供の脳がいつもと違う音が聞こえたときに起きる自然な反応です。
教室と同じ学習をご自宅で!オンライン子ども英語教室【Lepton Bridge】「固まる」のは、実は研究者も注目している反応
1歳-2歳児はまだ言葉で「わかった」「わからない」と答えられない事が多いです。
保護者の皆さんが日常で目にしている「急に英語で話しかけられて固まる」というあの表情は、研究の現場で赤ちゃんの脳の働きを測るときに使われている反応そのものです。赤ちゃんは「いつもと違う音だよ!」ということに、ちゃんと気づいています。
赤ちゃんは全員「語学の天才」として生まれてくる
生まれたばかりの赤ちゃんは、世界中どの国の言語の音でも聞き分けることができます。日本語にはない英語の「L」と「R」の音の違いも、生後6ヶ月くらいまでの赤ちゃんは、大人よりもずっと正確に聞き分けることができます。
ところが生後6ヶ月を過ぎるころから、赤ちゃんの耳は変化していきます。クール博士の研究チームの実験では、生後6〜8ヶ月の時点で日本の赤ちゃんもアメリカの赤ちゃんも同じくらい「L」と「R」を聞き分けていたのに対し、生後10〜12ヶ月になると、アメリカの赤ちゃんは聞き分ける力がさらに伸び、日本の赤ちゃんは聞き分ける力が下がる、という違いがはっきり現れました。
これは、赤ちゃんの脳が「毎日たくさん聞いている言語」の音に、「何でも聞き分ける状態」から自分の母語への感度が大幅に上がるというこのです。これは自然な発達の変化です。
「じっくりと顔見ながら話す」だからこそ音を学び取れるという実験結果
クール博士のチームが行った実験も、あらためてご紹介します。生後9ヶ月の赤ちゃんに、聞いたことのない中国語(マンダリン)の音声を、「人が直接話しかける」「映像(テレビ)」「音声のみ」の3つの方法で聞かせたところ、「人が直接話しかける」で触れたグループの赤ちゃんだけが、中国語の音の違いをはっきり聞き分けられるようになっていました。同じ内容でも、映像や音声だけでは、その効果がほとんど見られなかったのです。
赤ちゃんの耳にとっては、「人と人とのやりとりの中で聞く」ということが、音つまり言葉を学ぶという上でとても大事なことがわかりますね。

言葉を覚えるには人と人とのやり取り、安心できる人といる環境にいるからこそ言葉として定着していくのでしょうね。
日本にいながら「英語脳」の土台を育てるためにできること
色々な研究結果からも、海外に行かなくても、日本の家庭の中でできることがいくつか見えてきます。
1. 「対面」で聞かせる時間を意識的につくる

アプリや動画を流しっぱなしにするのではなく、その音声に合わせてパパ・ママが子どもの顔を見ながら一緒に発音したり、指さしたりすることが、研究からわかるようにとても効果的なのです。
アプリやChatGPTの音声は、「一人で聞かせる教材」としてではなく、「大人と一緒に楽しむきっかけ」として使うのがポイントです。とても大事なことです。
2. 同じ場面で、同じフレーズを繰り返す
1〜2歳の脳は、毎回違う言葉を聞くよりも、同じ場面で同じフレーズを繰り返し聞くことで、音のパターンを記憶していきます。
「お風呂に入るときは必ずこのフレーズ」「靴を履くときは必ずこの一言」というように、生活の中の決まった場面に英語のフレーズを結びつけると、耳に残りやすくなります。
3. 英語の歌やチャンツでリズムを体で覚える
1〜2歳の子どもは、まだ言葉の「意味」よりも音のリズムで覚えていきます。
英語の歌や、リズムに乗せた短いフレーズ(チャンツ)は、意味を教え込むよりも先に、英語特有の音のリズムそのものに耳を慣らす効果があります。
4. 日本語と英語を無理に分けようとしない
「英語の時間」と「日本語の時間」を厳密に分けなくても、日常会話の中で英語と日本語が自然に耳入ってくること(例:「お水飲む?Water?」)自体は、バイリンガル環境で育つ子どもによく見られる過程です。無理に切り分けようとするより、生活の中に自然に取り入れていくほうが続けやすいです。
5. 「固まる」「ごまかす」反応が出ても、無理に言わせない
英語を聞いて固まったり、笑ってごまかしたりするのは、前述のとおり「音の違いに気づいている」サインです。
この場面で「言ってみて」と言葉を引き出そうとすると、プレッシャーを感じて英語そのものへの苦手意識につながることがあります。
気づいていること自体を「何だろう?この言葉?」と受け止め、繰り返し楽しく触れる機会を続けることが大切です。
子どもと一緒に関わりながら英語に触れていく

子どもが親と話をするという事のがどんなに大切なのかがわかる研究があります。
喃語(なんご)にも、母語の”音”がすでに表れていると言われています。
フランスの研究者ド・ボアソン=バルディエスらが、フランス語・アラビア語・広東語の家庭で育つ赤ちゃんの喃語を分析したところ、生後10ヶ月ごろには、赤ちゃんの喃語の音の特徴が、すでにその家庭で話されている言語の音の特徴に近づいていることがわかりました。
まだ「ママ」「ワンワン」のような意味のある言葉を話す前の段階から、赤ちゃんの発声には、日々耳にしている言語が定着しているという事です。
英語脳の土台を作るには子供と常に関わり、話をして、母語をしっかりと身につける環境を整えて始めるという事です。
まとめ
1〜2歳のお子さんが英語を聞いて一瞬固まり、目を丸くして、最後に笑ってごまかす——あの表情は、「わかっていない」のではなく、「いつもと違う音に気づいて、一生懸命聞き取ろうとしている」証拠です。日本にいながらでも、アプリやChatGPTを「対面でのやりとり」に組み込み、同じ場面で同じフレーズを繰り返し、家族みんなで一緒に楽しむ時間を積み重ねることが、研究で裏づけられた「英語脳」の土台づくりの方法といえます。
参考文献:Patricia Kuhl「赤ちゃんは語学の天才」/Kuhl, Tsao, & Liu(2003)乳児の外国語音韻学習に関する実験研究 ベネディクト・ド・ボアソン=バルディエス(Bénédicte de Boysson-Bardies)博士らの研究チームが行った喃語に関する研究
